時計の画像

開花で時間の経過を知る。

花時計について

制作の流れ

花時計について

 1日(24時間)のうちに花が咲き、しぼむ花があります。それを一日花と呼びます。それぞれの花は決まった時刻で咲く概日リズム(体内時計)を持っています。一日花を咲く時間の早い順に並べていくと、大まかな時刻を知ることができます。それを「花時計」といいます。
花時計を初めて作ったのはスウェーデンのリンネ( 1708年〜78年)という博物学者、生物学者、植物学者です。リンネは分類学の父として知られています。1750年、植物の花の開閉時刻を観察し、1時間単位で咲いたりしぼんだりする花をあげた「ホロジウム・フローラ」という本を出版しています(十亀 1996)。

リンネの花時計

日本版花時計

リンネの花時計は彼がいた場所で観測された花なので、日本でみられる花とは違います。日本の植物学者の十亀好雄さんが植物を観察し、まとめた本があります。このデータをもとに時計を作ることにしました。

明石・神戸における一日花の花時計(十亀 1996 p.134-135)

選んだ花について

  • アサガオ、ハス、マツヨイグサの開花から閉花の時間を表した図

    アサガオ、ハス、マツヨイグサの開花から閉花の時間を表した図

  • 朝の花:アサガオ<br>自宅で育てたアサガオ(2020年8月撮影)

    朝の花:アサガオ
    自宅で育てたアサガオ(2020年8月撮影)

  • 昼の花:ハス

    昼の花:ハス

  • 夜の花:マツヨイグサ<br>(2021年6月撮影)

    夜の花:マツヨイグサ
    (2021年6月撮影)

最小限で1日がわかるように、朝、昼、夜にそれぞれ開花する花を3つに絞りました。

  1. アサガオ
  2. ハス
  3. マツヨイグサ

それぞれの開花の過程を並べると、大まかな時間がわかります。

カタチを決める

Copal japan 1970s Alarm flip number electric clock

コパル社製 1970年代のパタパタ時計

Solari GIF

盤面の駆動の様子

それぞれの開花の過程を並べて表示すると、大まかな時間がわかります。 これを形にするには、「パタパタ時計」の形式を選びました。 パタパタ時計は盤面の自由性があり、花の過程を描くのにぴったりだと思いました。 既存のパタパタ時計を借りて、盤面を作りました。 60枚で一日経過するようにしたので24分に1枚めくれます。

実制作

盤面の素材とデータの作り方、印刷の仕方を紹介します。

素材の選定

盤面の素材はPETを選びました。
背景に空の色を入れて、より時間の経過を際立たせるため、白よりも連続性のある「透明」を使うと決めました。
以下の条件を満たす素材を探し、試しました。

  • 透明であるか
  • 0.5mm厚以下であるか
  • レーザー加工が可能
  • UV印刷が可能

素材名/加工レーザー切断UV透明厚さ0.2-0.5mm価格
1アクリル板0.5高価(参考値:550mm*440mm 3810円)
2ポリスチレン(プラ板)△(端が溶ける)0.2-0.5安価
3PET(ポリエチレンテレフタラート)△(焦げる)0.5安価
4ポリカーボネート(PC)△(黄変色する)0.5安価(300*200 219円)
5PLA樹脂××板状が少ない(主にフィラメント)
6ABS樹脂×0.5安価
7ポリ塩化ビニル(PVC)×(有毒ガス)×0.5安価
8ポリプロピレン×0.2安価
9ポリエチレン×0.5安価
10ガラス(ソーダ石灰ガラス)×(溶ける)××高価

レーザーカット 実験

  • レーザーカッター/Big Laser Cutter Universal ISL12.75

    レーザーカッター/Big Laser Cutter "Universal ISL12.75"

  • ポリスチレン(プラ板)を切り出した盤面

    ポリスチレン(プラ板)を切り出した盤面
    端が溶けてしまい精度が出にくい

  • PET(ポリエチレンテレフタラート)を切り出した盤面

    PET(ポリエチレンテレフタラート)を切り出した盤面
    熱に強く丈夫だが、焦げ跡が目立つ。設定を何度か変更し、カットしたが焦げは残ってしまった。後述の方法で焦げ跡を回避した。

  • タント紙を切り出した盤面

    タント紙を切り出した盤面

レーザーカッターを使い、盤面の素材を検討しました。

  • PET
  • PS
  • タント紙

レーザーカット 本制作

  • 盤面の図

  • 軸を円盤で挟んだボビンのような部材に盤面を差し込む

  • カットデータ A4から20枚切り出すことができる。
    一台につき180枚必要。

  • レーザーで切るときに裏にくる面にマスキングテープを貼る。

  • カットした様子

  • マスキングの部分は焦げ付いている

  • マスキングを剥がすと焦げが取れる

レーザーで切り出します。一台につき180枚必要です。PET板450×600で80枚切り出すことができます。

工夫点

レーザーにもクセがあり、裏面が焦げ付くという問題がありました。それを防ぐために幅広のマスキングテープを貼り、カットし、後から剥がすという方法を取りました。そうすると綺麗にコゲがつかずにカットすることができました。

UVプリント 本制作①

制作手順

  1. 素材の置く位置を印刷。
  2. 背景色を印刷。
  3. シルエット(ベタ塗り)を印刷。
  4. ホワイト(ベタ塗り)を印刷。
  5. カラーを印刷。
  6. クリアを印刷

透明の素材を選んだため、裏うつりの問題がありました。両面をカラーだけで印刷すると、色が混ざってしまい綺麗に見えません。
裏うつりを逆手に取って、背景に利用しようと決めました。背景に見える色を印刷します。そして前面のカラーが映えるようにホワイトをしきます。そしてカラーを印刷します。その上から遠近感を出すためクリアを印刷します。それを裏面にも同じく行います。

筐体への取り付け

こうして印刷したものを筐体にくっつけます。この筐体を使い、実際に時計として動くかを撮影しました。

実際に時計として24分に一回めくれるものを作ることを目指しています。

筐体設計:石田花恋(鳴川研)

筐体試作

ボタン実装・電池での実装

1回ボタンを押すと1枚めくれ、長押しすると一周めくれるようにしてあります。アルディーノと電池、モーターが内部にあります。

筐体設計:石田花恋(鳴川研)