開花で時間の経過を知る。
1日(24時間)のうちに花が咲き、しぼむ花があります。それを一日花と呼びます。それぞれの花は決まった時刻で咲く概日リズム(体内時計)を持っています。一日花を咲く時間の早い順に並べていくと、大まかな時刻を知ることができます。それを「花時計」といいます。
花時計を初めて作ったのはスウェーデンのリンネ(
1708年〜78年)という博物学者、生物学者、植物学者です。リンネは分類学の父として知られています。1750年、植物の花の開閉時刻を観察し、1時間単位で咲いたりしぼんだりする花をあげた「ホロジウム・フローラ」という本を出版しています(十亀 1996)。
リンネの花時計
リンネの花時計は彼がいた場所で観測された花なので、日本でみられる花とは違います。日本の植物学者の十亀好雄さんが植物を観察し、まとめた本があります。このデータをもとに時計を作ることにしました。
明石・神戸における一日花の花時計(十亀 1996 p.134-135)
最小限で1日がわかるように、朝、昼、夜にそれぞれ開花する花を3つに絞りました。
それぞれの開花の過程を並べると、大まかな時間がわかります。
盤面の素材とデータの作り方、印刷の仕方を紹介します。
盤面の素材はPETを選びました。
背景に空の色を入れて、より時間の経過を際立たせるため、白よりも連続性のある「透明」を使うと決めました。
以下の条件を満たす素材を探し、試しました。
素材名/加工 | レーザー切断 | UV | 透明 | 厚さ0.2-0.5mm | 価格 | |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | アクリル板 | ◯ | ◯ | ◯ | 0.5 | 高価(参考値:550mm*440mm 3810円) |
2 | ポリスチレン(プラ板) | △(端が溶ける) | ◯ | ◯ | 0.2-0.5 | 安価 |
3 | PET(ポリエチレンテレフタラート) | △(焦げる) | ◯ | ◯ | 0.5 | 安価 |
4 | ポリカーボネート(PC) | △(黄変色する) | ◯ | ◯ | 0.5 | 安価(300*200 219円) |
5 | PLA樹脂 | ◯ | ◯ | × | × | 板状が少ない(主にフィラメント) |
6 | ABS樹脂 | ◯ | ◯ | × | 0.5 | 安価 |
7 | ポリ塩化ビニル(PVC) | ×(有毒ガス) | ◯ | × | 0.5 | 安価 |
8 | ポリプロピレン | ◯ | × | ◯ | 0.2 | 安価 |
9 | ポリエチレン | ◯ | × | ◯ | 0.5 | 安価 |
10 | ガラス(ソーダ石灰ガラス) | ×(溶ける) | × | ◯ | × | 高価 |
レーザーカッターを使い、盤面の素材を検討しました。
レーザーで切り出します。一台につき180枚必要です。PET板450×600で80枚切り出すことができます。
レーザーにもクセがあり、裏面が焦げ付くという問題がありました。それを防ぐために幅広のマスキングテープを貼り、カットし、後から剥がすという方法を取りました。そうすると綺麗にコゲがつかずにカットすることができました。
透明の素材を選んだため、裏うつりの問題がありました。両面をカラーだけで印刷すると、色が混ざってしまい綺麗に見えません。
裏うつりを逆手に取って、背景に利用しようと決めました。背景に見える色を印刷します。そして前面のカラーが映えるようにホワイトをしきます。そしてカラーを印刷します。その上から遠近感を出すためクリアを印刷します。それを裏面にも同じく行います。
こうして印刷したものを筐体にくっつけます。この筐体を使い、実際に時計として動くかを撮影しました。
実際に時計として24分に一回めくれるものを作ることを目指しています。
筐体設計:石田花恋(鳴川研)
1回ボタンを押すと1枚めくれ、長押しすると一周めくれるようにしてあります。アルディーノと電池、モーターが内部にあります。
筐体設計:石田花恋(鳴川研)